子供の頃、家の周りには田んぼしかなかった。田舎というほど田舎ではないが、決して栄えてはいない標準的な地方の街で育った。母が子供の頃は、家の周りの田んぼはすべて桑畑で、鬱蒼と生い茂っていたらしい。
歩いて5分くらいのところに地元チェーンのコンビニがある。初めてのおつかいはここにいった。それから漫画を買ったり、ゲームを予約して早朝に買いに行ったり、エロ本をかったり、未成年で酒を買おうとして怒られたりした。驚くべきことに私が子供の頃から店長は変わっておらず、結果的に私の成長を見守られたみたいになっている。
さらに10分ほど歩くと、環状線とよばれる太い道路があり、その向こうにハローマックとケンタッキー、スーパー、弁当屋などがあった。ハローマックのワクワク感や、匂いまでよく覚えている。お金をためてここでよくビーダマンやゲームを買った。初代プレイステーションを買ったのもここだった。一緒にスターグラディエイター2という格ゲーを買った。
自転車で15分ほどいったところに、レンタルビデオと本屋とCD屋が一緒になったでかい店があった。田舎なので店がでかい。そこはたまり場のようになっていて、いつも誰かしら友達がいるみたいな感じになっていた。カツアゲをされそうになったこともある。中学生のころ、小遣いをためて少女革命ウテナを少しずつ借りて見た。
今では、ここに上げた店はすべてなくなっている。コンビニは別のチェーンに鞍替えして、いまでも同じ店長がやっているが、それ以外の店は全部なくなってしまった。どうなったかというと、家の近くに広大な田んぼがショッピングモールになった。スーパーや牛丼屋や子供服屋や100円ショップ、スーパー銭湯などが集まっている。めちゃくちゃ便利だし、道も整備されて暮らしやすくなった。
今思い返すと、当時は道が曲がりくねっていたり、突然行き止まりになっていたり、おそらく計画性のない開発で道がぐちゃっとしていた。それらも整備されて良くなった。
まあそれは良いことなんだけど、私の子供の頃の風景はもう殆どなくなってしまった。